主人公・島村ジョーは、ある日謎の男達に捕らえられ、サイボーグに改造された。世界の影で暗躍する死の商人「黒い幽霊団(ブラックゴースト)」が、画期的な新商品・サイボーグ兵士の試作品にするため、偶然ジョーを選んだ。
ヒーロー、ここに在り。
原作はもちろん「石ノ森章太郎」による漫画作品
TV版の一期、2期は色々と原作と違う点も多かったらしいが
本作品は割りと原作通りに描かれているらしい。
基本的なストーリーはSFアクション。
主人公である「島村ジョー」は目が覚めると見知らぬ実験室に居た
すると頭の中に謎の声が聞こえ、施設から脱出することに。
そこには自分と同じように改造された8人の仲間が居た・・・という感じだろうか?
序盤から戦闘シーンの連続だ。
彼らサイボーグは突然拐われ、改造され、サイボーグの兵器として
悪の組織である「ブラックゴースト」の実験道具にされようとしていた所、
「ブラックゴースト」の中の一人であるギルモアが反乱を起こし、
ギルモアとともにブラックゴーストから逃亡する
逃亡しても彼らに安息の日々はない。
ブラックゴーストは執拗に彼らに刺客を送り込み、彼られは戦う。
彼らは自分たちの安息の日々のためにも必死に戦う
彼らはサイボーグだ、能力が進化するようなことはなく
彼らに送り込まれる刺客は、自分たちのあとに作られたサイボーグ。
故に彼らより強い場合が多く、最初に現れる敵すらも苦戦する
彼らが互いに協力し、強敵に立ち向かっていく姿は緊張感のある展開の連続だ
ブラックゴーストとの戦いを描きつつ同時に「サイボーグ戦士の悲哀」も描いている
彼らは望んでサイボーグになったわけではない。
それぞれの生活があり、それぞれの夢があり、それぞれの大切な人が居た
だが、サイボーグになってしまったことでそれが全てなくなってしまった
故郷に変えれば、人間だった頃の夢や家族を思い出し
あるものはそれを敵に利用され、あるものは罪滅ぼしのためにと
サイボーグになってしまったことによる悲しみをよく描いていた。
その話が1話で起承転結がしっかりして描いているので見やすい。
テンポよく話が進み、サイボーグ戦士の悲哀とブラックゴーストとの戦いを
交互に描きつつ「009」たちにしっかりと感情移入させるというストーリー展開は
流石「石ノ森章太郎」というべき内容の面白さだ
そして17話でブラックゴーストの首領を倒す
その後の18話からは彼らのサイボーグとしての日常を描いており、
基本的に1話完結で、各地に散ったサイボーグたちを毎話描いている
この中盤からの展開は確かに1話1話面白いのだが、若干ダレを感じる中盤でもある。
3話~4話の長編はあるものの、その長編までが長く感じてしまう場面もあった。
だが、決して短編が面白くないわけじゃない。
彼らがブラックゴーストとの戦いを終えた直後の18話など、
それぞれの立場で一緒に居た時の「料理」を思い出し、
自分たちの今の生活に役立てる話など、非常に完成度が高く
「戦い終わった後の日常」に入るという印象を強く植えつけた
更に間に挟まれる3~4話の長編の完成度も高い。
神として作られたサイボーグ達の戦いなど、
石ノ森章太郎らしい悲哀と正義に満ち、そして見終わった後に
なんともいえない「悲しさ」が残る長編だった
009の「僕達が戦う最後人間になろう」という言葉が心に強く残る
そして最初から最後まで彼らにつきまとう「ブラックゴースト」の存在。
更に「未来」にまでブラックゴーストが存在し、戦いが続いていることを009達は知る。
彼らが戦ってきた意味、戦い続けることの意味を未来を知ってしまったことで絶望する
「009」は未来を信じられなくなる、。
だが、彼にはそれまで戦ってきた仲間がいた
彼は自分たちが望む未来にするため元の時代に戦いに戻る・・・
この40話あたりから最終話までの盛り上がりは熱い。
「ヒーロー」を描いてきた石ノ森章太郎の彼の「ヒーロー」が
この「009」という作品には詰まっている、
「ヒーロー」のかっこよさ、「ヒーロー」の戦い、「ヒーロー」の悲しみ。
彼らの立場は常に厳しく、苦しい。
悲しみに彼らは押しつぶされそうになりながらも戦い続け、
彼らヒーローは「悪に勝つ」。
最終話のあの見終わった後のなんともいえない消失感は
この物語の結末に相応しかったといえるだろう
全48話、しっかりと楽しめる作品だ
だが、全48話と書いたが本作品は本来は「全51話」だ。
残りの3話は「009」の呪縛とも言える石ノ森章太郎が未完で終わらせてしまった
天使編と神々との戦い編をもとに3話だけ作られている
全48話終わったあとに、この未完の3話を放映してしまった
アニメオリジナル展開で終わらせるわけでもなく、
本当に3話だけ描いているため中途半端なところで終わってしまう。
だが、本当にこの3話の面白そう!という感じが溢れている。
原作者石ノ森章太郎がアニメに登場し、
彼の目の前に本物「ギルモア博士」が現れ、
「サイボーグ戦士たちは本来は21世紀の人間であり、001がテレパシーで
過去の石ノ森に伝え、それを基に描かれたのが萬画『サイボーグ009』だ」
と伝える。
そしてギルモア博士はハッピーエンドを頼む」と言い残して去っていく
この期待感、このドキドキ感、この「面白そうな話が始まる!」という
面白い漫画を読みだした時のような強い、強い感覚がこの3話で描かる。
だが・・・未完だ・・・。
制作陣の気持ちもわかる、この「期待感」、石ノ森章太郎が描きたかった009の完結、
そういった気持ちを抑えきれず、未完であることを承知の上で
あえて3話だけ作った制作陣の「石ノ森章太郎」への強い思いは
画面を通り越して伝わってくるようだった。
全体的に見て「009」という作品の凄さを感じた作品だった
序盤から中盤までの息をもつかせない展開、
中盤からの日常描写、そして終盤の怒涛の展開と
しっかりとメリハリの聞いている4クール作品だ
石ノ森章太郎氏が描きたかったであろう「ヒーロー」と「正義」、
そして「サイボーグ」という3つの要素が美しくも悲しく描かれており
それはアニメという媒体でも揺るがなかった。
残念なのは前述したように未完の部分や、一部作画が止め絵の連続だった事などがあるが
それを差し引いても「面白い」と感じる作品だった
未完の部分は完結として小説版で出ており、
2012年には新たな視点で描いた「009」の映画が作られた。
未完の部分は確かに他の人が書いたものだが、
できれば「009」の物語をきちんと終わらせるアニメ作品をテレビでやってほしい。
深夜アニメではなく、子供見れる時間帯できちんと
「ヒーロー」である「009」を描いたアニメ作品を作り上げて欲しい
そう感じてしまう作品でもあった
私の中で石ノ森章太郎といえば「仮面ライダー」だったが、
この作品を見たあとでは石ノ森章太郎といえば「009」と
すっかりと塗り替わってしまった
「009」という作品がいかに面白く、いかに名作か。
原作の凄さを作品全体から感じることの出来た作品だった
彼らの戦いを「アニメ」という媒体でも、終わりにして欲しい
私は完結編まで描くリメイクを待っています。
この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください